吉祥天女伝説
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背景の、葛篭(つづら)

に見立てた門から現われ

る吉祥天女SOUND(395k)

【解 説】 数多くある三味線音楽の中で《長唄》は、色々な音楽を取り 入れて発展して来ました。その理由はともあれ、まだまだ発展 の可能性を秘めていそうな長唄も、目まぐるしい発達を遂げた 近世の文明とスピードに、少しづつ説得力の喪失が進行しているように思えます。 古典であるが為に、守る事にこだわる余り、視野が狭くなったりして時代の感性を導入する事にためらいが生じては、ついには守るべきものの扉を閉めてしまう事にもなりかねません。

  率先して新たな表現へのチャレンジと解釈や、ほんの少し先の時代の感性を取り込むことが出来る心の余裕があれば、古典を「守り」・「継承」して行ける道が 続くのではないでしょうか。そこに創作の必要性が生じ、且つ亦、発展を遂げて行けるのであり、創作と継承は表裏一体とも言える部分です。

 唯一とは言いませんが、少なくとも極めて重要な方法ではないでしょうか。 そのような基本の考え方から、今迄の長唄三味線音楽の技法・ 表現などを充分に使い、音で想像力を駆り立てるように試みたのが、『耳なし芳市』であり『吉祥天女伝説』です。

「耳なし…」は、ほとんどナレーションが主でしたが、「吉祥…」では歌詞は少なく、又、歌詞の中での割合はナレーションより唄の部分が多くなっています。 説明的歌詞に頼らず、三味線と十七絃での場面表現も多くなっ ております。

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【 あらすじ 】(上の巻)
  遠江の国の或る村に伝わる掟。 ここでは、村祭りの日に「白羽の矢」が立った家の娘を、山の祠に人身御供として差し出さなくてはなりません。 丁度通りがかりの旅僧が事の仔細を聞き、神 が人身御供を求める事を不審に思い、社の縁の下に隠れて様子を窺います。するとどこからともなく大勢の鬼達が現れます。  … 上の巻「白羽の矢」 はここ迄の部分です…

鬼達は、口々に、「きっしょ 早太は おるまいの」 「今月今夜 このことばかりは きっしょ 早太に 知られるな」…と、そう言い ながら娘の入った葛篭(つづら)を担ぎ去ります。 一部始終を知った旅僧は、鬼達は、その「きっしょ」 「早太」 が苦手に違いない。二人を探して、鬼退治をしてもらおうと、 旅に出ます。

 ここ、武蔵の国の、とある村迄来た僧は、名主の息子に「早太郎」と言う息子がいる事を聞き、その名主の家を訪ねて委細を話します。 そこには「きし」という美しい奉公人がおり、いつしか早太郎とは割りなき仲。

話を聞いた、きしは「〈きっしょ〉とは〈きしと…〉の聞き違いに相違ない」と、自分も共に連れて行ってくれと望み、更 に、この家に伝わる宝珠を貸し与えて欲しいと願います。 実は、その宝珠こそが、長年きしが捜し求めていた宝珠です。

〈きし〉とは実は《吉祥天女》の仮の姿で、その昔「羽衣の松」の折、衣の他に、旅人に拾われて持ち去られてしまった「吉祥天女の宝珠」そのものだったのです。…勿論、未だそうとは 知れていない…三人は連れ立って遠江の国へと旅だちます。

【プロローグ】(〓この色が歌詞
従来で言う「置唄」に当たる部分。 一オクターブの音で、 ゆったりと出る音は物語の始まりと劇性を予感すると共に、後に出てくる主リズムへの自由な移行を含んでいます。 そして…

〓遠江の国の  夏祭り

…祭の合方…夏祭りが、始まります。

【祭 り】

いきなり主リズムによる解放絃での早間の場面となります。 三味線音楽では、今迄使われていなかった リズムで、楽器による 場面表現が続きます。 ボサノバ等に通じるリズムで、祭の持つエ ネルギーを現代の感覚で感じています。 祭の始まる頃は、ま だ夕暮れ時かも知れません。 やがて夕闇と共に、

〓豊饒祈る 村人の

の辺りから、盛り上がりを見せる長い祭は、 突然凍りつく恐怖に変 わります。

【ストップモーション】

〓笛の音凍る 一条の光 夜陰をつらぬく

踊っていた仲間が、山の奥の方から青白く筋を引く光を見つけます。

〓見ろー 白羽の矢じゃ〜

実際に矢が飛来する時間は何秒と言う単位なのでしょうが、人々の身も凍る恐ろしさと悲しみの予感で、一瞬時間は止まり、それはあたかも、スローモーションの映像を見るが如く、白羽の矢が光の糸を曳いて飛んで来ます。 そして、矢が農家の軒先に突き刺さった時、 時間は、はっと元に戻ります。…ここのみシンバルでジャーーーーン!

【村の定め】
白羽の矢が刺さった家では恐ろしさと悲しさに苦悶します。

〓なぜじゃ なぜなのじゃー わしところの 娘がー 人身御供なんてエ  いやじゃ  いやじゃ いやじゃ いやじゃー

〓おとお  おかあ   村の為じゃー   村の定めじゃー みんな元気でなー

【送 り】
来る年の豊作を願う為、村の為、掟に従い娘の入った葛篭は、山の祠に続く、幾重にも曲がる葛篭折れの道を登って行きます。 肩にくい込む心の重荷と共に…。

〓涙に濡れて  葛篭折れなる 身の重き

哀れはかなくも、掟に縛られ、娘の命は悲しみの淵に沈む事とな ります。

【エンディング】
物語りとしての、上巻の終わりで、劇的悲しみを救う手立ての後編へと繋がって行きま す。 《上の巻前編END》

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…◇…◇…下の巻解説…◇…◇…

門の両とびらに描かれているのは吉祥天女のまわりに座す「梵天」と「帝釈天」。

ちなみにこの絵は、横にした模造紙を3枚つなげて墨で描いたものです。(Tokueの手作り)

【あらすじ 】(下の巻)

 あれから一年経った遠江の国の村。今年も巡る夏祭り。白羽の矢が立ち、今日にも人身御供を差し出さなくてはならず、村人は悲嘆に暮れて「ます。 折しも、やっとの事でたどり着いた三人は、村人に訳を話します。

 〈きし〉が身代わりとなり葛籠の中へ。早太郎と僧は木立の蔭にと忍びます。

【闇の合】

きっしょ 早太は おるまいの 今月 今夜 この事ばかりは きっしょ 早太に 知られるな

 鬼達は、そう言いつつ辺りを窺いながら現れます。遠巻きにしていたのが徐々にと葛籠に近づき、葛籠に手を掛けます。蓋を少し開けたところで、一瞬眩いばかりの光が射します。 慌てて蓋を閉じる鬼。 怪訝な鬼達が、再度葛籠に近づき、思い切って蓋を取ります。

【吉祥天女出の合方】

 葛籠の中から吉祥天女が光を放ち気高く現れます。

【立ち回りの合方】

 驚く鬼達。すかさず飛び出す早太郎。立ち回りとなります。

 早太郎が危ない!。すかさずかざす天女の宝珠。二人は協力しあいながら遂に鬼達は退治されます。 闘い済んで、吉祥天女の名乗り。(ここまでは三味線・琴の器楽だけで表現されてます。)

〓私は吉祥天 いとしい早太 この宝珠は もとは私のものでした 

 この様に私の手に戻りし上は 私は天に帰らねばなりません

 武蔵の国の あの村は 吉祥寺 と 名付けるよう

 末百年 あなたの村を守りましょう

【吉祥天昇天の合方】

 愛しい早太郎に事を話し、武蔵の国のあの村を、自分の縁で「吉祥寺」と名付けるよう言い残し、後光の中、吉祥天女は高く、高くと、昇天します。

〓武蔵の国よ 吉祥寺よ とこしえに

 空から降り注ぐ声はやがて遠く遠くに…《下の巻後編END》

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